| 和語 | 琉球・沖縄語 | アイヌ語 |
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かく(駆)|かける |はーえー |ちゃし |
はす(馳)|はしる、はせる |はゆん |ぱし |
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この「かく」は両の足を互い違いに素早く蹴出して前進する意のカ行渡り語動詞のひとつである。人間の動作、行動のもっとも基本的なもののひとつであろう。
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か(駆)-かく(駆く)-かくる(駆くる)
-かける(駆ける)-かけらふ
-かす(駆す)⇒はす(馳*走)
-かつ(徒つ)「かちゆく/かしゆく、かちさむらひ徒侍、おかちまち御徒町」
-かる(駆る)〔(馬を)走らせる〕
き( )
く(蹴)-くwu(蹴wu)「くゑはららかす(紀神代上)」
け(蹴)-ける(蹴る)-けらる(蹴らる)-けられる
こ(越)-こす(越す)-こさす(越さす)-こさせる
-こさる(越さる)-こされる
-こゆ(越ゆ)-こyeる(越yeる)
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は(馳)-はす(馳す)-はさす(馳さす)-はささく-はささける「はしこし捷」(k-h)
-はしる(走しる)-はしらす-はしらせる「はしりで/わしりで」
~さばしる(さ走る)(サ接)
~たばしる(た走る)(タ接)
-はする(走する)
-はせる(馳せる)
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わ( )-わす( )-わしる(走しる)(9世紀の大唐西域記に初出の古語である)(h-w)
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琉球語では「はーえー」と「はゆん」が見られる。「はーえー」の方に「駆けっこ」の訳語が多くついているのでこれが「かる(駆)」の後身としておく。
アイヌ語では「かす(駆す)」に並ぶとみられる「ちゃし」、「はす(馳す)」に並ぶと見られる「ぱし」がある。どちらも「走る」の意である。「ぱし」には「いぱし、うぱし、おぱし、こぱし」など走るものの状況を細かく言い分ける派生語がある。アイヌ語にはまた「走る」の意の動詞に「ほゆぷ」があり、これがもっとも一般的な「走る」かも知れない。「ほゆぷ」は先に「ゆひ(結い)」の項で述べた二拍動詞「ゆぷ(強く締める)」の派生語と見られる。
和語の「かす」「はす」、アイヌ語の「ちゃし」「ぱし」の存在を見れば、この”走る”意のカ行動詞がハ行語に転じたのは7300年前の鬼界火山噴火以前の原始日本語の時代の事件だということであろう。
以上